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「元気なしらが好きだよ」
彼は言った・・。
会社ではいつも元気にしていた。
男並に仕事もこなしてた。
『○○事業部のしら』
と言えば、社内では知らない者はいないってほど
存在感のある女だったみたい・・。
いつも元気でいることに疲れていたあの夏・・。
大切な人を亡くし、無気力だったあの時・・。
ふと彼が誘ってくれた。
「明日暇?海にでも行く?」
なんとなくOKした。
水曜日・・。
勤めていた会社は水・日休みだったので、
大抵水曜日は会社の人たちと遊びに出かけていた。
待ち合わせた場所に彼は現れた。
黄色いカブトムシ。
「元気になるだろ?」
あの夏も今年と同じような暑い夏だった。
その暑さも吹き飛ばすほど元気な黄色が鮮やかだった・・。✨✨
それでもあの夏、私の心は死んでいた。
他の人を元気にする気力など残っていなかった。
誰かに甘えたかった。癒されたかった。
彼。甘えさせてくれるのかな?
と思った・・。
海の近くで育ったと言った。
伊豆の西海岸・・。
みかん畑から見る海
みかん色の夕日・・。
泣けてきた。ただただ泣けて、彼に甘えた・・。
受け入れてもらえなかった。
驚いていた。
「いつも元気な子だと思っていたから・・。」
彼は私に元気を求めていた。
私は彼に安らぎを求めた。
仕事だけのつきあいじゃほんとの性格はわからないよね。
あの日初めて気づいた。
黄色いカブトムシ・・・
黄色いガーベラの咲くあの助手席には
私はふさわしくなかったな・・。
ちょっと切ない
ひと夏の思い出・・・。🌊
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