第1章

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「彼を連れてくるなら、しっかり証拠を固めてからにするべきでは?事件のあとにすぐ呼び出すなんて、配慮に欠けています。これでは彼が犯人だと、まわりに触れ回っているのと同じだ」 教師――それも知り合って間もない人間を相手取って、十字の佇まいはいかにも堂々としており、こういった場に慣れているように見えた。 日比は二の句を告げる前に勢いを潰され、沈黙している。 八十と岡本教諭は、ただただ傍観者を決め込んでいた。 八十は今起きている現状を認識できず、岡本に於いては、疲れたようにため息混じりだ。 たぶん、先刻の自分を見ているかのように思ったのだろう。 「えーと……」 二つの視線が八十を見る。 十字は流し見るように、日比は眉間に皺を寄せて。 「先生がここに来るまでに何度も言ったように……俺は、前に俺がやったことの話をしにきただけです。当然、今回のことは俺じゃありません」 「……」 日比の顔から、険の色は晴れない。 対する十字の顔に変化はなかったが、八十には、彼女が満足気に頷いているように思えた。 「分かった……分かった。もう、戻っていいぞ」 悔しそうに言う日比の姿は、まるでこちらが犯人だと最初から疑っていたかのような態度だった。
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