第1章

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「では、私と彼は帰らせてもらいます。先生方は会議でお忙しいでしょうし、私たちは自習をしないといけないので」 言い終わった十字は、立ち上がると八十も立つよう視線だけで促した。 岡本教諭は終始オロオロしっぱなしだったが、日比は黙ったままライターの蓋の開閉を繰り返している。 生徒の前では吸えないという、職務観念だろうか。 八十は退室の際に一応礼をしたが、二人ともこちらを見ておらず、日比に至っては既に煙草に火を点けていた。        ◆ 最後の授業の終わりを告げる鐘が鳴り、教室に喧騒が戻ってくる。 午後からはしっかり通常のカリキュラムが進行され、八十はその大半を窓の外を眺めて過ごした。 もちろん、ただボーッとしていたわけではない。 放課後、どう動くかを考えていたのだ。 朝の一悶着の後、十字環とは生徒指導室の前で別れた。 後を追って話をしてみようと思ったのだが、すぐに見失ってしまった。 残念に思う反面、八十の十字環への期待は高まっていた。 教師に連行されている時は、放課後まで缶詰コース、悪ければそのまま吊し上げられることを考えていたのだ。
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