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「今朝の事は気にしなくていい。岡本教諭と話していたのだが、どうにも要領を得なくてね。悪いけど、こちらが逃げる口実に使わせてもらったよ。昨日のことは……余計なお世話だったかな?」
とんでもないと、首を振る。
むしろ、あの場から逃げたことが、今となっては悔やまれた。
(まあ、居ても何も出来ないけどね)
「それは何より。じゃあ、私は行かせてもらうよ」
「あ、ちょっと十字さん……」
「十字」
「……え?」
この場から去ろうとした十字が、ターンをするように八十へと振り返った。
「同年なのだから敬称はいらない。十字でいい。更に言うなら、環でも構わない」
そう言われて初めて気付いた。
彼女の纏っている学校指定ブレザーのネクタイの色は、一年を示す水色だった。
「それで何か用かな?」
「え……あ、えーと……」
引き止めてはみたが、話すことが何もない。
色々と考えてはいたのだが、突然の遭遇に頭が真っ白になってしまった。
(今朝呼び出された話を振ろうか……いや、あまりにも無神経な気がするし)
「用が無いなら、行かせてもらうが?これでも、忙しいのでね」
「そ、そうだね、ホームルームも残ってるし……」
「いや、そうじゃない」
「え?」
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