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気の抜けた顔をしている八十とは対照的に、十字は額に手を当て、首肯する。
「君も無関係ではないし、話しておいたほうがいいかもしれないな。……ついてきてくれ」
言うが早いか、十字は既に歩きだしていた。
呆気にとられていた八十は、見失わぬよう、急いでその後を追った。
◆
(どうしてこんなことに……)
四月にしてはまだ肌寒い風を受け、身震いした。
十字につられてやってきたのは屋上。
本来鍵が掛かっているはずの扉は、十字が何をするでもなく容易く開いた。
今、その当人は金網を背にこちらを向いている。
その瞳は一辺の揺らぎもなく、八十を見つめていた。
「泊木八十君?」
「は、はひ!」
上ずった声で答える。
見るからに動揺し引け腰の男子生徒、片や悠々と仁王立ちしている女子生徒。
他人が見れば、さぞ滑稽な構図に指を差して笑っただろう。
「君は、負けず嫌いな方か?」
「……?」
「難しく考える必要はない。思ったまま答えてほしい」
「はあ」
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