第1章

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負けず嫌いか……か。 むしろ、負ける人生しか経験したことが無いから分からない。 急場に遭遇してもまず逃げることを考えるし、負けたくないとかは思ったこともない。 ただ……こうして十字を探して人生に一矢報いてやろうと考えるに至ったのは、紛れもない、負けず嫌いの表れじゃないだろうか。 「……どちらかと言えば、そうかな」 「なるほど。では、君が優秀な同士になると信じて、私の企みを話そうか」 は?……同士? 「私も過去に、今朝君が話したような経験をしてね。それで今朝は岡本教諭に呼び出されていたわけだ。その後は、言わなくても分かるね」 疑問は湯水のように湧き出てくるが、とりあえず無言で頷いておく。 「悔しいと、思わないか?」 「……は?」 今度こそ、疑問が口をついて出た。 悔しい?何が?悔しいといえば、今朝の寮食は初日ということもあってかなり豪勢だったらしい。昼休みに食べた学食のカレーは甘口を頼んだのに激辛だった。その後購入したカップのドリンクは何故か“あったか~い”コーラが出てきた。 (悔しい!悔しいというか憎い!更に言うなら虚しい……) 程度は低いが、今日一日だけで一週間分の不幸に見舞われた気分だった。
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