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「どうやら、相当悔しいようだね」
八十の苦悩する有様にちょっと引き気味で十字は言葉を続ける。
「私は今、その調査を行っている」
「ん、調査?」
自分の思考とは検討外れの単語が出てきて、おうむ返しに聞き返す。
「そうだ」
カッ、と十字の踵が地面に高い音を踏み鳴らす。
まるでそれが、これから始まる芝居の合図のように。
「真犯人を、吊し上げる」
真犯人?
いくら八十が頭の回転が悪く、いつも思考が脱線気味であってもそれが何の真犯人を指すのか、すぐに見当が付く。
「テスト泥棒の真犯人……って事だよな。何でそんなことを」
「私はね、存外、誰かに貶められるのが嫌いでね」
ニヤリとまさしく、悪魔の美笑と表現するに違わない微笑みに十字の顔が歪む。
「相手がどういうつもりで事を起こしたか知らないが、間接的にでも私をコケにした代償はとってもらうつもりだ」
「具体的に、捕まえたとしてどうするんだよ?」
「そうだな。法の裁きなど生温い。それこそ、市中引き回し張りつけ獄問なんていいかもしれない」
(さすがにそれは冗談だよな)
まったく冗談に聞こえないが。
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