第1章

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「探偵の真似ごとでもするって事か?」 そうでなければ刑事か。 「探偵……。君は冴えない見た目に反して、なかなか適した言葉を使うね。言い得て妙だ」 「誉められてるのか貶されてるのか、複雑だ」 「もちろん誉めているんだよ。ならばさしずめ、私が探偵ホームズ。君が……ワトソン君といったところかな」 「ワトソンって、まるで俺が犯人探しを手伝うみたいじゃないか」 「みたい、じゃない。手伝ってほしい」 「はぃ?」 「というか、手伝ってくれるだろう?」 さも当然、といった感じで聞いてくる。 「何で」 事件のこともあって、ただでさえ教師に目を付けられている。 ここで事件のガサ入れに参加でもしたら、不幸が転じて退学にだってなりかねない。 「私は、君が私の同士となってくれることを前提に話をした。君も、私の誠意に応えてくれると嬉しい」 「……」 強引とか、そういうレベルでは表せないほどの荒唐無稽さに、開いた口が塞がらなくなる。 (それで同士なわけね……) ここで断ってしまうのは簡単だが。ただそうした場合、十字との接点は断たれ、明日からまた不幸な毎日が続くことになるだろう。
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