第1章

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(そもそも俺は、何で十字を探していたのか) さながらパンドラの匣のように、今までの不幸な人生に十字という名の希望を見つけ、それに縋ってみたくなったからではないか。 関わって風当たりが強くなったって、それは今までとかわらない。 (どうせこれからの人生、変わりが無いものになるくらいなら) 放課後を告げるチャイムが鳴る。 (落ちるなら、落ちるところまで落ちてやる) 不幸のどん底まで。 そうすれば、逆に笑ってしまうような結末だって待っているさ。 「わかった」 八十が考えている間、無言でこちらを見ていた二つの眼をしっかりと見つめ返す。 「協力させてもらうよ」 八十の答えに、十字は満足そうに頷いた。  
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