夢幻の如く、一睡の春の夜にて。

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―――月に、刀身が輝く。侍の魂。 鈍く輝くそれは、血を浴びて尚も素晴らしい輝きだ。普遍のものはこの世にはないけれど、その普遍さの中で一時でも輝こうとする。 まさに、侍の魂だろう。 儚く生きる侍に、ぴったりだ。 刀を一降りして、血を払うと地面に渇いていない血が、びちゃっと音を立てて地面にじわりと滲みた。鞘に収めると、背後から手を叩く音がした。人が近付く。俺は、条件反射のように振り向けば、そこに男が立っていた。笠を被り、顔が暗がりで見えないが、闇に慣れた瞳は男の線を写す。 細い。男にしては、細かった。着流しが、その細さを余計、強調している気がする。 「いやぁ…あんた、すごいね。5人相手に、ばったばったと…すごい刀捌きだ」
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