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広い世界を見てみたいとは思う。
きっと、それは俺が見る世界より広く底知れぬ何かがあるのだろう。
俺が知らない世界。
しかし、俺はこの国でしか生きて行けぬように思うのだ。
どうにもならないこともある。
俺が生きる場所は、そんなものが広がっている。
倒れ伏す屍に、一々情を傾けては刀を握り続けられない。
――闇夜に輝く刀のようになれ。
それが、俺の生きる道。
家に着く頃は、夕日が昇っていた。
赤い、燃える赤だ。
「お帰りなさいませ」
お幸と相模が出迎えてくれる。
こんな俺にも、帰るべき家があるのだと思うと、胸に切ない程の痛みが広がる。
とても暖かい切なさで、あの夕日のようだ。
「お夕食の準備、整えて御座います」
<春霞に、一閃輝く。>終
[続く]
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