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「其れで、今日は如何されました?」
「御前に、新しい仕事を任せようと思ってな」
「僕に、ですか」
「そう、御前に」
そう言いながら片目を瞑って見せた緝に苦い笑みを浮かべれば、浹は頷いた。
「緝の頼みは断れませんからね、何でも仰って下さい」
「御前は儂を甘やかすのが上手いな」
「ふふ。其の言葉、そっくり其の侭緝に御返しします」
困った様な、其れで居て何処か嬉しそうな顔で、緝は浹を手招きして呼ぶ。
こつこつと踵を鳴らしながら、開いていた距離を埋め、そっと緝に近付けば、彼は静かに耳打ちをした。
言葉が脳内に広がって理解すると、浹は何度も瞬きを繰り返す。
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