壊れる日々

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父さんの着ている、 会社のスーツからは タバコの臭いがした。 父さんは僕を 抱きしめながら言う。 「父さんはこの道を行く・・・ お前はどっちへ行くか、 自分で決めなさい。」 「そんな…」 これが喧嘩以上のことだと、 自分で十分すぎるほど わかっていた。 でも、出ていくなんて… 父さんの帰る場所は、 ここだよ? 他にないんだよ… そうでしょ? 抱きしめられていて、 父さんがどんな顔をしているか分からなかった... そう言った父さんは、 僕を抱きしめるのをやめて、 ドアを勢いよく開けて 家を出て行った。 閉まったドアの音だけが 耳の中でこだましている… 何?これは、 なんかのドッキリじゃ ないよね? 「うァーーァアアアァァ…」 リビングで母さんが 泣いているのが聞こえる。 「母さんっ!」 僕は駆け足でリビングに向かった。 母さんはテーブルに 伏せるようにして泣いていた。 「母さん!父さんは どこに行ったの? さっきの話してた事は なんだったの? ねぇ教えてよ! 母さん!!!」 僕は母さんの肩をつかんで、 力を込めて聞いた。 「母さんからは、 何も言えない・・・」 母さんは泣き声で そう言った。
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