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私は遂に赤い壁の内側の乾燥した土を踏み締める。固まった土が砕け、小さな音が散る。一陣の風が吹き抜け、砂が舞い上がる。目を細めながら進むうち、T字路までたどり着いた。倉庫のような建物が、忍び足で歩く私を見下ろしている。 右に行くか、左に行くか。どうやら右には居住区があるようだ。形も大きさも様々な木造の家々が並んでいる。左には田畑が広がっていて、刈り取られた稲が乾されている。土が剥き出しの道は左右共に幅も広く、行動の妨げにはならないと思われる。 私は数秒の熟慮の末、右に進む決断をした。進行方向を少しずつ右に傾けていく。その時だった。 「おわっ!」 「きゃっ!」 T字路を曲がろうとした私に、誰かが勢いよく突っ込んできた。ぶつかった拍子に互いに尻餅をつき、目をぱちくりさせて双方の姿を見合う。 少年だった。歳は五歳か六歳といったところだろう。丸坊主の頭をぽりぽりと掻きながらゆっくりと立ち上がり、少しばかし潤んだつぶらな瞳で私を見下ろしている。よくよく見れば、目が充血していた。その姿は正しく泣きそうな腕白坊主のそれであった。
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