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「なら、聞くが佐野。お前がもし怪しい奴、例えば長州藩だったならわざわざ門番がいる門を堂々通って来るか?しかも1人で。」
そう問われ、佐野は暫く考えて
「いえ、自分だったら見つからない所に侵入する……と思います。」
「だろ?なら、門から堂々と入ってきたこいつは怪しくねぇ。」
「……成る程。」
私は黙ったまま2人のやりとりを目で追い、“佐野”と呼ばれる人と一緒に納得する。
───うん。それもそうだ。
「…で、お前名は?」
「……え?」
そう聞かれ、驚く。
まさかそんな事言われるとは思わなくて、一瞬黙り込む。
それから
「筧 雄利(カケイ ユウリ)と申します。」
「ん…筧、かけい、カケイ……あ、お前、今日入隊したいって言っていた筧だったのか。」
思い出したように、そう私を指す“副長”。
知らなかったのか…。
まぁ、顔を知らないから当然か。
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