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「…違うよ。全然、淋しくない。」
その様子から、雄利が淋しくない事くらい俺にでも分かる。
しかし、だからといって、雄利が弱音を吐く奴だとも、思わない。だから…───
「……別に、一生会えなくなるわけじゃねぇんだからさ。別れの時くらい笑えよ。な?」
そう言って、雄利の頭を不器用に撫でまわす谷口。
それが彼にとって、精一杯の励まし方だった。
しかし、私は谷口さんの言っていたその意味が、“一生会えなくなるわけじゃない”という言葉が、よく分からなかった。
だけど、分からないけれど、それを受けとるように私は谷口さんの手を握った。
その時の谷口さんは、どこか悲しそうな、しかし哀愁を含んだ目をしながら笑っていた。
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