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「コウー」
ごろん、と大好きな匂いのするベッドに転がりマーキングするようにごそごそ寝返りを打つ。
返事がかえってくることを期待していたわけじゃない。
コウの匂いに包まれてコウの名前を呼ぶ、その幸福感に浸っていたいだけだ。
「何、」
言外に今忙しい、という含みをもたせて返ってきた声はあさっての方向に響いた。
コウのからだはテレビに向けられ、おれからは丸まった猫背しか見えなかったから当然なんだけど。
こっち向けバカ、と声には出さず念を送ってみるが、カチカチとゲームのコントローラーを操作する音だけが無情に響く。
コウを夢中にさせているゲームがおれは好きじゃない。…格闘ゲームでは母さんに負けるし。
なによりおれからコウを取り上げてしまうから嫌い。
「…疲れた」
「あ、そ」
疲れたってば、聞いてんのかよ。
冷たい相づちに、さすがにムッと口を尖らせ非難の目でコウを見た。
まあね、いつものことなんだけどね。
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