しかえし【完】

3/5
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
自分が人のこと家に呼びつけておいて、来たら来たでお構いなしにほったらかしなのはどういうわけだ、と普通なら怒るところだけど、おれらの間では割と普通の光景だったりする。 お互いが何をしていようとも、同じ空間にいて一緒に時間を過ごせればそれでいい。 近すぎず、遠すぎず、無関心でもなければ束縛もしない。この心地良い距離間がたまらなく好きだ。 でも、今日はそのいつもの距離が何となく無性に寂しい。 ふいに甘えたくなって、構ってほしい、と視線を送るのに、コウはこっちを見ようともせずただ低く笑った。 「疲れたって、あんた寝てただけでしょ」 確かに。 コウのベッドでゴロゴロすんの好きだよ。 確かにそうだけど、その言われようは納得がいかない。 誰かさんが構ってくれないから寝るしかねえんだろ、と心の中で呟いて口を尖らせる。 「寝るのに疲れたんだよ」 半ば憮然と答えれば、反対に楽しそうな声。 「ふははっ、何それ。あんたやっぱりずれてるよ」 俺はヅラじゃないからずれてません。 と寒いギャグを飛ばしてやろうかと思いながら、ダジャレ好きなオヤジの遺伝をひしひしと感じ、やめた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!