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双子の弟が、いた。
名前は幸也。
幼い頃、2人して流行病にかかり、程なくして幸也は命を落とした。
おれは何とか一命をとりとめたものの、高熱の後遺症か何かで声を失っていた。
でも、そんなことはどうでもよくて。
目が覚めた時、おれはかけがえのない存在を喪ったことを直感し、ぼろぼろと泣いた。
どうして、と。
おれたちは、いつも一緒でなければならないのに。
その後のおれの生活は、以前と変わらなかったと言える。
いつもと同じように。
まるでそこに幸也がいるかのように語りかけ、宝物みたいに名前を呼ぶ。
『幸也、今日は天気がいいね』
『花を摘んできたよ、幸也の好きな花』
――幸也が側で笑ってる気がするね。
母ちゃんが言って、おれは嬉しくなって笑った。
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