小さい一歩

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「お前さー、せめてもうちょっと愛想だしてけよ。」 カウンターに戻ると、零一さんが囁いてきた。 「………何をどうしたらいいのか。」 ボソリと言えば、 「だから、とりあえず笑っとけって。」 それが無理なんだって! 黙り込んだ僕に気持ち悪いくらいの笑顔を見せてくる。 「ほら、お前も。」 …ニ、ニコ? 「ぎこちねー。」 僕の精一杯の笑顔を否定する。 しょうがないじゃん。 できないもん。 「無表情やめろって。」 …そんなになのか? 「ほら、珪、猫好きだったよな?」 唐突な零一さんの問いに戸惑いながらも、 猫が好きなのは事実なので、 素直に頷く。 「じゃあさ、可愛い猫がココにいるとする。」 可愛い猫… 「その子が珪を見つめてくる。 ちょっと首をかしげながら小さい声でニャァと鳴く。」 ……… 「どう?」 「めっちゃ可愛い。」 「その顔!」 今まで小声で喋ってたのに、 急に大きな声になった零一さんに焦る。 「佐伯くんたち変な目でこっち見てるじゃないですか!」 小さい声で零一さんに怒る。 「ワリィ。」 零一さんはそういって肩を竦める。 チラッと佐伯くんのほうを見ると、 佐伯くんと目があった。 …ニコッ。 あ、目そらしてくれた。 「やりゃできんじゃん。」 へ? どうやら僕は自然な笑顔をつくれていたらしい。 ちょっと複雑。
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