小さい一歩

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結局、その日はそれ以上なにもなかった。 話し掛けるなんてやっぱ無理。 所詮僕なんてそんなもんなんだ。 自暴自棄になりながら、まだ人の少ない朝の教室で、 自分の席に座って窓の外を見ていた。 朝練終わりらしい生徒が何人も歩いている。 部活か…。 部活だったら普通に友達でるかな? けど、団体競技苦手だし、 バイトもあるし。 第一、やりたい部活ないしなぁ。 なんて、バカなこと考えててると、 目の前に誰か座った。 いや、前の席の奴なんだろうけど。 と思って、目の前を見ると、 座っていたのは佐伯くんだった。 「おはよっす!」 また、にこやかに笑いかけてくる佐伯くん。 「お、おはよう。」 今日はちゃんと笑顔を…。 ニコ。 おっ、佐伯くん、笑顔のままだ。 普通に笑えた? 「葉月ってアソコでバイトしてんの?」 ちょっと近付きながら、小さい声で聞いてくる佐伯くん。 「そうだけど…?」 戸惑いながら返事を返す。 「またさ、行ってイイ?」 「?イイけど?」 なんでわざわざ僕に了解をとるのか? 疑問はいっぱい。 「あんまさ、知り合いくるとやりづらいじゃん。仕事。どうかなっと思って。」 や、優しい人だ!佐伯くん! その心遣いにギュっときた。 「いつでも、遊びに来てね。」 佐伯くんが笑顔で頷く。 僕、今、幸せだ…。
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