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黄ばんだボールは、夕陽に照らされて、静かに彼を見上げている。
年に1度の社員球技大会の風景が彼の脳裏に蘇った。
若い社員に背中を押されて打席に立ち、見事な三振で喝采を浴びたあの日……。
「なんだ!!0に戻っただけじゃないか!!」
人は誰でも、やり直す権利を持っている。
彼はそれを忘れていた。
「うんっ!!ありがとうっ」
彼は脱ぎ揃えた革靴を再び履き直し、非常階段へ急ぐ。
黄ばんだボールは、彼の手を離れ、放物線を描いて、夕闇に消えて行った……。
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