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「あっ、もうこんな時間!」
河川敷の砂利道を自転車で帰りを急ぐ。
スーパーの買い物袋を意識しながら、ペダルに力を込めた。
<そのボール、拾ってくれませんか?>
彼女はその声に驚き、急ブレーキをかける。
車輪に目を落とすと、黄ばんだボールが転がってきた。
彼女は自転車を降り、それを拾い上げて振り返る。
誰も居ない。
「何なの?」
彼女は辺りを見渡す。いつもなら、多少往来のある路に、今は人の影すらなかった。
再び、握りしめた黄ばんだボールを見つめた。
「今度は、ママが捕ってよ」
小学校に上がったばかりの息子の声がする。
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