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俺が姫の手を引いて歩いていると、姫が急に立ち止まった。
ふと、我にかえって姫に何も説明できていないことを思い出した。
無我夢中だった。ここにいたら、姫は石の塔に連れていかれてしまう。姫は喋ることができないから、否定もできない。あの王妃が姫の書いた文字を読むとは思えない。
俺は、姫を助けたかった。
後のことなんて、考えられなくて、ただ連れていくことしか考えられなかった。
「姫様、申し訳ありません。あの…」
俺が口を開くと、姫は手で俺の口を抑えた。
「??」
俺が呆けていると、姫は俺の腕を引いて、庭園みたいなところに入っていく。
少し背の高めな生け垣には綺麗な花が咲いている。
庭園の中はまるで迷路だ。そんな場所を姫は迷うことなく、するすると進んでいく。
もし、何も知らなくてここに入り込んだら、たぶん迷うんだろうな。
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