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―――2025年、8月15日
気温は30度を越え汗がにじみ出すほど暑い空の下、小高い丘の上に一本の木が立っていた。
幹の太い緑に色付いた大きな木の下に、男と女が寝そべっていた。
空は『まだ』青い。白い雲も優雅に流れている。
「もう少し…だね。ここで一緒にいられるの」
「だな」
二人の手は繋がれていた。
強く、強く…
まるで決して振り解けないようにと、願うように。
「もう少しで空は消えてなくなっちゃうなんて…なんか信じらんないね」
「……昔な、パイロットになるのが夢だった」
「え?初耳!」
「小学校の低学年だぞ?まだ何にも知らないガキだったし。パイロットになるなんて簡単な事だって思ってた」
小高い丘を舐めるように優しい風が吹き抜けてゆく。
背の低い草に覆われたそこには風を隔てる物なんて何もない。
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