流星

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   夜に車を貸してくれと僕がオヤジに言うと、オヤジは女か?と聞いて嫌な顔で笑った。  もの凄くズバリ正解だったのだけど、恋人でもなければ、そんな気持ちにもなっていない僕は、オヤジの質問には答えずに、貸してくれるのか、くれないのかだけ再び聞いた。  オヤジは汚すなよと、ニヤニヤしながら言うと車のキーをくれた。  待ち合わせの時間まであと1時間ほどあり、僕はオヤジが仕事用に使っているワゴン車の中を少し掃除をした。  掃除と言っても人が不快感を持たずに乗る事が不可能なほど、車の中は汚れていたけど、夜に走るのだから、暗くてさほど気にもならないだろう。  時計を見ると時間が近づき、僕は普段はかけていない眼鏡を掛けた。  日常で必要なほど目が悪いわけでもなかったが、ちょっと乱視がキツイ僕は遠くの信号が二重に見えたりするので、運転するときは眼鏡を掛ける事にしている。  もう何年も前に作ったのだけど、掛けると度がきつく、動いたりすると目が回るので、普段は掛けていなかった。  久し振りに掛けた眼鏡を通して見る世界は、シャープになり、物事の境目がキッチリして見えた。  僕はエンジンをかけると、待ち合わせ場所になっているバイト先のコンビニに向けて車を発車させた。  小島さんとはバイト先が一緒というだけで、普段の彼女の姿はほとんど知らない。  洋裁の専門学校に通っていて、アパートに一人暮らしで、ネコを一匹飼っていて、家族構成は両親と弟の四人家族だという事や、ラーメンが大好きで、よく行列が出来る有名店に行ったりすると言う事や、漫画が大好きでジャンプ、マガジン、サンデー、チャンピオンは毎週欠かさずに買って読んでいると言う事ぐらいしか知らない。  それらも、バイト中に彼女が自分から話していた事で、きっとお喋りも好きなのだろうと思ったくらいだ。
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