2人が本棚に入れています
本棚に追加
市街を抜け、山道に入ると街灯もまばらになり、深い闇に包まれて、ヘッドライトの明かりだけが頼りになった。
「ちょっと街中を越えただけなのに、本当に真っ暗になったわよね」
小島さんが真っ暗な闇をお菓子を食べながら感想を言う。
「オバケとか出てきそうだよね」
僕がそう言うと、小島さんは笑って言った。
「オバケなんて怖くないわよ。そこにいるだけで現世に何の影響も与える事なんて出来ないんだから」
「そうなの?」
「もしそうでなかったら、オバケが社会問題化してると思う。オカルトの範疇である限りは、何もしないと言うのと一緒だよ」
「そんな考え方はした事がないな」
「怖いのは人間の方よ。何をするか何て予測が一番つかないもの」
「そう言えばそうだな。俺も何をするか何て解らないし」
「山田君は大丈夫よ。私の方が腕っ節も強いし」
そう彼女が言って笑ったのだけど、車内が微妙な空気になってしまった頃、僕らはようやく目的地の峠に着いた。
駐車場に車を止め、とりあえずは食堂もある道の家で腹ごなしをする事になった。
夏とは言え、高所の峠は夜になり気温も下がって、半袖では肌寒くなっていた。
念のために用意をしていたフリースを着込み、小島さんにも一枚貸してあげた。
「ずいぶんと用意がいいのね」
僕がフリースなんかを用意していた事に、小島さんが驚いて言ってきた。
「どこに行こうと、旅先では何があるか解らないから、フリースの一枚や二枚は用意しておく物だと、水曜どうでしょうでいってたような気がしたような」
その話に小島さんは大笑いし、僕たちは道の家に入る。
午前0時を回ったというのに、休日を前にしたせいか、客は多く、僕たちは食堂でうどんを食べた。
食べ終えると、外に出て、歩いて五分ほど先にあるという展望台に向かう。
他にも僕たちと同じように展望台に向かう人、そして戻ってくる人々の姿が暗闇の中にあった。
最初のコメントを投稿しよう!