・新しい家族

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「あ、あの―――…」 「いただきまーす」 手を合わせて朝食を食べ始める彼。 やばい この空気は………。 「え……えっと……ごめんね?」 「………なにが?」 「あっ……えっと…」 とにかく箸を進める彼。 がっくりするあたし。 だが、自分も食べなければ。 そう思い、あたしも席に着いて箸を持つ。 そして陸斗をチラチラ見ながら同じように箸を進める。 「………なに?」 「あ…えっと…」 あたしの視線に気付いたのか、声をかける陸斗。 「陸斗…やっぱり怒ってるから……」 「………」 そうあたしが言い放つと、陸斗はふぅーっと息を吐いた。 そしてあたしを見て困ったように笑うと口を開いた。 「…………弥姉、肝心なとこで聞いてないからさ。けっこう勇気だしたのに……」 「あー……それでなんだったの?」 「もう言わない」 「え!?」 笑顔でそう言い放つと再び箸を動かしておかずを頬張る。 気になって仕方がないのに………。 残念と思いながら強情な陸斗には勝てず、諦めて卵焼きを口にいれる。 「弥姉……」 すると突然彼があたしの名前を呼ぶ。 それに反応して陸斗の方を見る。 「俺、そういう弥姉悪くないと思う。鈍感なところとか……嫌いじゃない」 「―――…え?」 やわらかく微笑み、そう言い放つ彼にドキッとする自分。 その意味深い言葉がどういうことなのか、 今のあたしには気付かないのでった。
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