・真実を語る訪問者

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自分の部屋の前。 ドアを開けようとして、ドアノブを手にとるが…… 「…………」 開けられずにいた。 開けなくてもわかる、重い空気にためらった。 中から物音は一つもしない。 ……陸斗いるよね…? 心の中でそう呟いてしまうほど、いつもとは雰囲気が違った。 不安になりながらも深呼吸をして静かにドアを開けた。 「………あれ?」 音をたてながら開けるが、いつもと違うことに気付く。 部屋は真っ暗だった。 こんな遅い時間だと、普段なら電気はついている。 陸斗……いない? ふとそう思ったが、普段彼が使っているベッドから寝息が聞こえてきた。 ……あっ、そっか。 そういえば、体調が悪くて早退したんだったよね……? 起こさないように、そーっと部屋に入る。 「………んっ…」 が、気配を感じたのか、もぞもぞと体を動かし始めた。 そしてゆっくりと体を起こす。 「あ……ごめん、起こしちゃったね」 そう彼を見ながら謝るが、陸斗はあたしと目も合わさずぼーっと前を見たまま。 近くにあったスイッチを押し、部屋を少し明るくする。 「陸斗?大丈夫?調子、まだ悪いの…?」 いつもとなにかが違う彼に声をかける。 すると顔を俯かせ、小さな声で口を開いた。 「……おかえり…なさい」 たったその一言だが、耳をすませないと聞こえないほどであった。 「え……あぁ…ただいま」 戸惑いながらそう答えれば、なにも言わずにベッドからおりる。 そして一瞬だけ、あたしに顔をむけると部屋を出て一階におりていってしまった。 「…………?」 いつもと違う二人。 お母さんと陸斗……。 なにか……あったの? それに、見逃さなかった。 陸斗が一瞬むけた寂しそうな顔。 目が赤く、腫れていた。 泣いてた? そう読み取ることができる。 でもなんで? さっきまで彼が寝ていたベッドを見つめる。 もちろん、なにがあったかなんてわからない。 けど、この時からだった。 変わったのは……。 もうすぐ来る。 悲しみと真実を知るあの日、は…… もうすぐ―――…
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