・明らかになる日

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―弥SIDE― 「――…卒業おめでとう。大学に行ってもよろしく」 「こちらこそ」 クスクスと笑いながら、あたしは夏希に胸元に花をつけてもらっていた。 ―――…先程から何度、この言葉を言ったり聞いたりしているだろうか……。 最近は静かだった教室も、今日だけはザワザワと騒いでいる。 みんなともこれで最後なんだ。 進学する子もいれば、就職して働く子もいる。 みんながみんな、それぞれの進路へと進む。 少し寂しさを感じながら、首を動かして教室をまじまじと見る。 「はい、できた」 満足げに微笑む夏希。 在校生が作ってくれた紙でできたピンクの花に、小さな可愛い花を飾りつけてもらった。 「ありがとう」 優しくその花に触り、自然と笑みが零れた。 「あたしもつけてもらったし……あ、弥、よかったら書いてよ」 そう言って夏希は来た時には既に机の上に置いてあった卒業アルバムを持ってきた。 そして一番最後の真っ白なページを開き、ペンと一緒に差しだす。 「一緒の大学にいくのに?……へんなの」 笑いながら、あたしも手に持っていた卒業アルバムを夏希と同じように差しだした。 人のこと言えない、とクスクス笑いながら夏希は真っ白なページに書き込む。 あたしもペンを握りしめ、書き込む。 "お世話になりました。これからも迷惑がかかるだろうけど、よろしくね。" よし、と一言口にして夏希に目を向ける。 夏希も、できたと口にしてあたしに卒業アルバムを渡した。 そこには、 "迷惑をかける弥じゃなきゃ弥じゃない!これからもめんどうみてあげるよ 笑" 真っ白なページのど真ん中に書かれた、でかい文字。 夏希らしい言葉に思わず笑ってしまった。 「弥はかたいねー…んまっ、ありがとう!あたし、他の人にも書いてもらってくるね」 そう言って楽しそうに行ってしまった。 「……あたしも色々な人に書いてもらおっかな」 先ほど夏希が書いた文字を指でなぞり、呟いた。 そしてペンを持ち、他の人の所へ行ったのであった。
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