・明らかになる日

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「お疲れ様。卒業おめでとうございます」 あたしを見て一言、陸斗は口を開いた。 「……ありがとうございます」 あたしも笑って返す。 いつもと変わらない。 彼とよく話していた頃に戻ったようだ。 ………いったい、何が彼を変えたんだろうか。 それが一瞬頭の中をよぎった。 「それじゃあ、いこっか」 そう言うと陸斗は歩き出す。 どこへ行くの、と問えば陸斗は上を指差すだけ。 よくわからない自分はただ彼についていくしかない。 ただ階段をのぼり続け、最上階の四階に着く。 そして長い廊下を歩き続け、行き止まりの所まで行く。 そこは『立ち入り禁止』と通れないように紐で繋げられていた。 「え、え?陸斗?」 けど陸斗はそんなのお構いなしに紐をくぐり抜ける。 ……大丈夫なのかな。 見つかったらどうしよ、などと考えながら周りに人がいないか確認する。 「弥姉」 戸惑い、来ないあたしに声をかける。 手招きをして、来るように言ってるけど……。 ……生徒会でも絶対入らないようにって注意されてたんだよなー……。 「大丈夫」 そんなあたしの気持ちを読みとったのか、そう口を開いた。 「……もう卒業なんだし、見つかりもしないよ。それに、興味あるでしょ?」 クスクス笑いながら再び手招きをする。 「…………、」 意を決し、あたしも紐をくぐり抜けてその先にあった階段をのぼる。 半分やけになってどうにでもなっちゃえー、という気持ちもあったが、置いていかれたくないという気持ちもあった。 満足げに笑う陸斗はその先を進む。 あたしも足を進め、ひたすら彼についていく。 そうすれば、扉が見えてきた。 少しさびていて、重そうな印象を受けたそれを陸斗はなんの戸惑いもなく開け、中に入った。 「あ……待って」 先に進んで中に入ってしまった陸斗に少し焦りを感じ、走って同じように中に入った。
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