・明らかになる日

7/9
前へ
/734ページ
次へ
「なにも……ないよ?」 「……え?」 「ただ、ここの景色を教えたかっただけ。ちょっとした卒業祝いだよ」 陸斗は微笑みながらあたしにそう言えば、その場に座り、黒い空を見上げる。 「……そっか」 なにかが引っかかるが、陸斗がそう言うのだからそうだろう。 そう思うしかなかった。 陸斗と同じように座り、上を見上げる。 「………広いね」 思わず口からでた自然な言葉。 「うん……」 陸斗も頷き、返してくれた。 そしてまた沈黙が流れる。 少し冷たい風が体にあたるが、それは気にならなかった。 「……ねぇ、弥姉」 と、その時だった。 陸斗がこちらに目を向け、あたしに声をかけたのだ。 「ん?」 なにかと思い、首を傾げて彼の方を見る。 「………弥姉は、どんなに自分にとって悲しくて残酷でも……それが好きな人のためだったら、その道を選ぶ?」 陸斗の突然の問いかけに驚く。 「え?」 なんでそんなこと聞くの? そう聞きたかったが、彼の真剣な表情を見るとそれが聞けなかった。 「その人の未来のために、自分の未来のために……お互いがその時悲しんでも、それが相手の未来のためなら……」 そこまで言って陸斗は俯いてしまった。 「……うまく、言えないけど……」 そのまま、陸斗は言い放った。 悲しそうな顔をして……。 でも聞いていてわかったこと、 陸斗には誰か好きな人がいること。 その好きな人のために、悩んでいるの……? 「あたし……なら、」 でもなんであたしに聞くの? 「好きな人のためなら最善の選択を選ぶよ……」 あたしが陸斗を好きなのを、陸斗は知ってるよね……? その陸斗の質問がショックでさっきから胸がズキズキと痛む……。 恋の相談……か。 「そっか、ありがとう」 俯いていた顔を少しあげ、陸斗は礼を言う。 でも、陸斗に好きな人ができたなら応援したい。 自分と結ばれることはないのだから……。
/734ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1710人が本棚に入れています
本棚に追加