・明らかになる日

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―陸斗SIDE― 「…………」 暗い部屋の中に一点だけ電気をつけ、小さなメモにペンを走らせる。 ふと外を見れば、辺りは真っ暗だ。 でももうすぐ夜は明ける。 最後に自分の名前を書き、ペンを置いた。 前から少しづつ荷物を移していたため、今から持っていく荷物はそこまで多くない。 「行こっかな……」 寝息だけが聞こえる部屋で一人そう呟いた。 泣きだしたいほどに、こんな辛い選択を選んでしまうのも、お互いのため。 そう、お互いの――…。 そこまで考え、二段ベッドの梯子を少しのぼって弥姉の寝顔を見る。 ”――どこにも、行かないよね……?――” その言葉がさっきから頭の中で何度も何度もリピートされる。 切なくて、罪悪感が押し寄せた。 “――行かないよ――” そう言えたなら、どんなに楽だったか。 ………でも俺は不器用で、まだまだ子供だから何もできない。 「………ばいばい」 勝手でごめん、 そういう思いを込めながら好きな人の額にそっとキスをした。 止められないうちに、 知られていないうちに、 ここをでていく。 お互い、新しい生活が始まる。 今さら本当の姉弟じゃないって知っても、恋愛をすることはできない。 周りの目がある。 それを気にして生きていかなければならない。 特に弥姉は他校からも有名だったから、自分との間に恋愛感情などがあったと知られたら、大変なことになると思った。 辛い未来が待っているだけならば、今離れて、お互い忘れて、新しい恋をして……… そう思ったんだ。 今の俺では守ることもできない。 それと……償い。 姉弟だって知って恋をしていたこと。 それがとても重い罪のように感じられたのだ。 ……いや、それはここを離れるためのただの口実かもしれない。 それに、 「……弥姉ならもっといい人いるよ……」 貴方の幸せな未来を奪いたくない。 だから――… ………そこまで考え、俺は扉に手をかけた。 そしてそれを開け、弥姉の部屋を出た。 扉の閉まる音がやけに重く感じられたのは……気のせい、かな……? 涙が零れそうになるのを必死に堪え、俺はこの家をでたのであった。
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