・胸の中に全てを

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―弥SIDE― ―――――… ――――… ―――――… 春が来て、夏が来て 秋が来て、冬が来て なんだかんだで年月は過ぎ、11月。 大学二年生になったあたしは通っている大学の正門前で携帯をいじっていた。 ふと時刻を見れば午後1時。 ふぅ、とため息をついてパタンと携帯をとじた。 ―――…あれから、もう一年半以上が経った。 刻々と時間は過ぎ、一日もあっという間に終わるわけだから、日付はもちろん変わる。 けっこうここまで来るのに長く感じた。 「わっ!!」 閉じた携帯をしばし見つめていたあたしに、驚かすつもりだったのだろうか、おおげさに声をあげる。 「夏希ー…やっときた!」 「え?あれ?驚かなかった?」 期待外れ、とでもいいたそうな顔に思わず笑ってしまった。 ―――…大学生になってからの夏希はけっこう変わった。 中身は変わらないけど外見は大人っぽくなり、モデル並みの容姿にみんなが目を引きつけられる。 そして、最近になってやっと守が好きだと認めた。 しかし、そんな守とは最近会ってないらしい。 ……まったく会わなくなったなぁ。 お互い、なんだかんだ忙しい。 大学生になってから色々変わった。 特にあたしは混乱することばかりだった。 ……あの日、起きたら陸斗はいなかった。 ただ机の上に彼が書いたと思われるメモが置いてあっただけだった。 “ちゃんといい人を見つけて、その人と幸せになってください” これだけだった。 まぁ、簡単に言ってしまえば振られたのだ。 本当の姉弟じゃない。 それを知ったのはその日の朝。 お母さんの口からでた言葉だった。 陸斗は今、今まで行方がわからなかった本当のお母さん……綾音さんの所に住んでいるらしい。 じゃあ連絡とれるから会いにいけるんじゃない? そうじゃないのだ。 向こうからもう会わないでほしい、関わらないでと言われたらしいのだ。 お母さんはそれは絶対に認めない、と言っていたのだが…… いつの間にか家も電話も変わっていたのだ。 それから、連絡をとる手段はなくなり、音信不通。 つまり、あれ以来陸斗とは会っていない。 綾音さん、という人……詳しくは知らないが、お母さんの妹で陸斗を産んだ張本人。 だが、事故で陸斗のお父さん……彼氏を失ったショックで行方をくらました。 陸斗をおいて。
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