・胸の中に全てを

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――――… ――――――… ――――――――… いつものように賑わう食堂。 席をとるのさえ困難なこの時間帯。 それでも無理矢理凉平に席をとってこいと言い、あたしはうどんを注文して凉平をさがす。 キョロキョロと辺りを見回していると大きく手を振っている彼の姿を見つけ、あたしはそこへ向かった。 彼と向き合う形になり、席を座る。 「場所とりありがとう!いっただきまーす!」 箸を手に持ちながら合わせ、あたしは元気よく口を開いた。 そんなあたしを見て、クスッと笑う凉平。 うどんの美味しさに夢中になる。 口に次々といれていくが、一つだけ気になることがあった。 「……なに?」 それは凉平の視線。 じーっと黙ったまま見られちゃ、食べにくい。 いったん箸を止め、凉平の方を見る。 「ん?いや……うまそうに食うなーって思って」 「でもそこまで見なくてもいいじゃん……何もおもしろくないのに」 「まぁ気にせず食えって!」 ははは、と大口をあけながら凉平は言った。 そんな凉平におずおずしながらも、あたしは食べ進めた。 そして沈黙が続く。 ………が、周りがうるさいのであまり気まずくはない。 「………なぁ、弥」 「ん?」 その中で凉平が口を開いた。 あたしは手を止め、コップの中にあった水を飲みほしながら彼を見た。 「……俺達、付き合わない?」 頬を少し赤くさせながらも真剣な顔で凉平はそう言った。 そんな彼に自分の目をパチクリさせる。 手に持っていたコップを机の上に置き、口を開いた。 「断る」 と、一言だけ……。 「はぁああ!?」 返事を聞いてガタッと立ち上がる凉平。 あたしは特に気にもせず、うどんを再びすする。 「俺のどこが嫌なんだよ!だいたい即答はひでぇだろ!」 「いつもいつも同じこと言ってしつこい!それにいつもあたしは即答でしょ」 凉平の言葉にズバッと言い放った。
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