・胸の中に全てを

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「え……んじゃあ結婚……」 「なんでそうなるの、毎回毎回……」 食べ終えて空になった器を見ながらため息をついた。 「そろそろ、違う返事ききたいんだけどなー…もう一年以上もこうだとさすがに俺も泣くぜ」 「…………」 何もいえず、ただ黙り込む。 「……んな顔すんな」 「わっ……!」 突然、凉平があたしの頭を手でくしゃくしゃと動かす。 「絶対惚れさせてみせるよ。おまえをな。俺しか見られないくらいに……」 くしゃくしゃになった髪の毛をなおすことさえ忘れる、彼のいつもと違う笑顔……。 無邪気で子供みたいに笑うくせに、たまに大人っぽいドキッとする笑顔……。 「んじゃ、俺もなんか買ってくるわ」 その声にハッと我に返る。 いつの間にか凉平の姿は人混みに紛れ、見えなくなっていた。 「………っ」 あーもう! ずるいよあんなの、反則だ! いつもと違う、ギャップというのだろうか……。 どうやらあたしはそういうのに弱いらしい。 あんないつもと違う顔見せられたら、 誰だってドキッとするに決まっている……。 そうあたしは自分に言い聞かせ、凉平が帰ってくるのを待った。
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