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─陸斗SIDE─
「────…?」
誰かの泣き叫ぶ声が聞こえた気がした。
なにかと思い、振り向いてみるが、なにもない。
なにも変わらない、ただ混んでいる交差点。
気のせい……か?
「りく、どうしたの?」
目の前にいる人物、生田日和(いくたひより)が変に思い、俺に聞く。
「……いや、なんでもない」
気のせい…か。
「…?変なの。あ、これ、今日は煮物!」
そう言って渡してくれたのは、タッパーに入った煮物。
「…あぁ、ありがとう。ごめんな、わざわざ家まで帰らせて、またここで待ち合わせて…」
ありがたくそれを受け取り、日和にそう言う。
「なによ今さら!お母さんもりく達に食べてもらいたい、って感じだしさ。ほら、りく頑張ってるからさ!これくらいは手伝わせてよ」
ニコッと笑う日和に同じように笑って見せた。
今の生活の中で、こういうことはとてもありがたかった……。
受け取ったそれを鞄の中にしまう。
「あ、雪!」
「……え?」
日和が空を指さす。
ぱらぱらと降ってきた白い粒……。
「クリスマスも降るといいなー…」
うっとりとそれを見る日和。
「あ、ねぇりく、クリスマスの日空いてる?」
パンッと手を合わせ、思い出したように日和が言い放った。
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