・想いを弟に

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―弥SIDE― ―――…人で溢れかえる朝の体育館。 校長の話。 生徒指導部からの注意。 進路調査部からの連絡。 それらが終わるといよいよあたしの出番。 「三年生徒会長、杉野弥」 「はい」 体育館いっぱいに広がる大きな返事をし、みんなが注目する舞台へとあがる。 ただあたしの話に耳を傾け、誰一人話すことはない。 そのことに安心感と緊張感を感じながら話を淡々と進める。 途中で噛んだり、止まったりしてしまうことが度々あるが………。 まぁ、そこは笑顔で誤魔化して………。 だがそうするとプライドの高い教頭がこちらを睨む。 『完璧』なものだけがいい彼にとっては間違いなど言語道断。 しかしそれに慣れた私にとってはもう何も気にしない。 「これで終わります」 話を終えると教頭の合図であたしと生徒が同時に一礼をする。 その瞬間生徒が一気にざわめきだし、体育館から次々と生徒がでていく。 これで全校集会は終わり。 「はぁー…疲れた…」 その場に崩れ、壁に寄りかかる。 まだ授業は始まってないというのに、 こんな所から疲れていてはいけないと分かっているんだが……。 後期生徒会の仕事はまだまだ始まったばかり。 教頭の迫力ある睨みには慣れたものの、生徒会の仕事はまだまだ慣れない。 「………って…こんなことを考えている場合じゃないや……」 もうすぐで予鈴が鳴る。 早く教室に戻らないと……。 誰もいない体育館で一人そう意気込む。 そして立ち上がり、自分の教室へと向かったのであった。
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