・伝える想い

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「べ…別に…怒ってないし…。」 弥は視線を別の方向にうつし、眉をつりあげる。 「やっ…やっぱり、お……怒ってる。」 それを見た陸斗は言いにくそうに弥に呟く。 えっと、あたし今そんなに恐い顔してますか……? そんなに怯えた顔しなくったってさぁ……。 いや、でも昨日の一件ではそうはいかないか……。 こうやって普通に何事もなかったかのように話してくれるのも、私に気遣ってくれているのだろうし…………。 それだけでも――。 ―――――…陸斗は昨日のことをどう思ってるのかなぁ……。 ――――…かといって、聞き出せる状況でもないし………。 「…………とにかく怒ってないから。」 「―――……。」 陸斗は何も言わず、黙って聞いていた。 一瞬、陸斗が悲しそうな表情を見せる。 弥はそれを見逃さず、胸がズキリと痛んだ。 「――――ごめん……。」 色んな意味を込めて謝る。 今、むきになって強く言ったこと、 ―――――…昨日のこと。 「―――…っ。」 陸斗はさっきの悲しそうな表情を見せ、弥と視線を外す。 長い沈黙が流れる。 「…………。」 「…………。」 「…………。」 「……………。」 「…………。」 「…………あ、あの。」 長い沈黙を破ったのは陸斗だった。 陸斗は弥と視線を合わせ、弥も陸斗を見る。 「……………あ、あのさ……昨日の―――。」「弥ー!陸斗ー!ご飯だからおりてきなさい!」 下から鈴乃の声が響く。 「あっ――…。」 「…………。」 弥は思わず声を漏らし、陸斗は黙り込む。 ベットにいた陸斗はおり、部屋をでるためドアへと無言でむかう。 ドアを静かに開け、一瞬チラッと弥を見てから部屋をでて下へと行った。 静かに扉が閉まる。 ――――… ―――… ――… 「―――ハハッ…。」 弥は壁にもたれ、笑みを零す。 思わず笑ってしまうのはなぜだろうか。 てゆーか……完全に嫌われたし。 あんな陸斗みちゃったらさぁ…。 「…………泣かないよ。私は…。」 弥はそう言うと、上をむいて涙が零れぬよう、堪えていたのだった。
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