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弥はあざをじーっと見つめ、俯く。
「…………ごめんなさい。あたし――…。」
「……あっ…えっと…。」
陸斗は弥の急な言葉に戸惑う。
弥は手首を離し、陸斗から一歩離れる。
「…え……弥姉…?」
「………あたし、陸斗に言わないといけないこと……がある。」
「………?」
悲しそうに笑う弥に陸斗は首を傾げる。
「………あたしさ、陸斗が好きだったんだ。ずっと…前から。」
「――…!!」
陸斗は驚き、目を丸くする。
「はは……そりゃあ驚くよね!あたしもびっくり!昨日…理性が飛んじゃったみたいで、あんなことしちゃって…言い訳にしかならないかもしれないけど………すごく後悔してる。」
「…………。」
陸斗は黙って弥を見つめながら話を聞く。
「――…ずっと話したいって思ってた。たった一言だけでも話せた日は嬉しくて…。単純かもしれないけど……。弟だって分かってても……好きって気持ちが大きくなっていって……。とうとう爆発しちゃったみたい。」
「――あっ……弥姉…。」
「取り返しのつかないことしちゃって……あたし……。………なんか陸斗素っ気ないし、あたしといるとすごい気まずそうだったし…ご飯の時だってすぐに上に行ったし……それ見てさ、陸斗があたしのこと嫌い…なんだなぁってすぐわかった…。まぁ…あんなことされたら当たり前だけどね…。」
「……えっ…弥姉…。」
「これからは…えっと…陸斗があたしのこと嫌いなのはわかるけど……もっと話せたらいいなぁーなんて…。都合よすぎるけど…。」
「弥姉!俺は……。」
「ごめん。もう…いいかな、あたし…けっこうつらいから…。」
「弥姉、聞いて!俺は……!」
「―――…弥ー!ちょっと聞きたいことがあるから、下おりてきて!」
―――下から鈴乃の声が響く。
陸斗は突然の鈴乃の声に驚き、話を中断する。
「はーい、今いく!――…あっ…じゃあ、あたし行くから…本当にごめん………。」
「あっ、ちょっ…………。」
――――バタン
弥がでていき、扉が閉まる。
「……弥姉、俺は……。」
誰もいなくなった部屋で陸斗は一人呟き、悲しそうに俯く。
――部屋の中は外でひどく降る雨の音だけが響いていた―――…。
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