・嘘の強がり

13/19
前へ
/734ページ
次へ
「あっ、杉野。」 「え?」 突然の声に弥は前を向く。 それに続いて守も前を向いた。 「あっ…寿……。」 「久しぶり。」 寿という男子は優しく微笑み、弥を見ている。 ――――寿卓夢(ことぶきたくむ)。 サッカー部部長。 背が高く、サッカーの試合ではいつも大活躍。 いつも黄色い声援が飛び交っていた。 そして―――。 ――――私の元彼様。 「…――杉野さ、今から時間ある?話したいことがあるんだけど……。」 「……あぁ…悪いんだけど、今席から離れられないや。」 弥は時計を見ながら淡々と答える。 「………あっ、そっか。じゃあ…ここでいいや。」 卓夢は一瞬チラッと隣りにいる守を見る。 守は首を傾げ、眉をつりあげる。 弥も卓夢のなんだか言いにくそうな表情に首を傾げる。 卓夢は大きく深呼吸をすると、口を開いた。 「俺達……より戻さない?」 卓夢は少し顔を赤くしながら、真剣な表情で伝える。 隣りにいる守は驚き、固まっている。 弥も目を丸くし、卓夢をじっと見る。 「……………。」 「……返事…待ってるから。」 「えっ?あっ…!寿!」 そう言うと寿はもと来た道を早足で帰ってしまった。 弥はポカーンとし、驚きを隠せないでいる。 「モテる女は辛いねぇ。」 守はニヤニヤしながら弥を見る。 弥は恥ずかしそうに守を睨む。 ――…たく、寿の奴…なんでこんな奴の前で言うのだろうか。 弥は小さく息を吐くと思いついたように口を開く。 「そういえばまだ来ないなぁー。あの子。」 「だよなぁ。まだ来ねぇよな。夏希…。」 「えー?夏希?うち夏希の事言っていたんじゃないんだけどー。守ったら夏希待ってたんだぁ。」 「…………!」 弥はニヤニヤして顔の赤い守の反応を楽しんでいる。 「てめ……!わかってて言ってるだろ!言い方が棒読みだ……って、夏希達だ。」 「えっ?」 守の言葉に弥は前を見る。 見ると、少し遠い所から夏希を含めた三人の人達がこっちにむかって歩いて来ているのだ。
/734ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1710人が本棚に入れています
本棚に追加