・嘘の強がり

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「――めずらしいメンバーだね…。」 弥は近付いてきた夏希に一言そう言った。 思わずそう言ってしまうのも無理はない。 ―――まさか陸斗と来るとは……。 「あたしが誘ったんだ!」 夏希は弥の近くに来て笑顔でそう言った。 「……………。」 陸斗は黙ったままで違う方向をむいている。 ―――まるで私と視線を合わせないようにするために……。 弥は一瞬、悲しそうな表情を見せたが気付かれないようにまたすぐ笑顔を作った。 「えっと……そっちの人は?」 弥は陸斗の隣りにいる男子に声をかける。 見るかぎり、陸斗の友達だろう。 なぜか顔を赤くしている。 「あっ、俺、り…陸斗と同じクラスの武本尚宏です!」 尚宏は緊張のあまり、声が震えている。 それに気付いた弥はクスッと笑い、紙に三人の名前を書いていく。 「……はい、どーぞ。食券です。」 隣りにいる守はドスの入った低い声でぶっきらぼうに渡す。 ………守、機嫌が悪い。 理由は簡単だ。 夏希が陸斗と腕を組んでいるからである。 周りから見たら恋人同士。 陸斗はされるがままになっているが………。 わかりやすいなぁ…守は。 すごい陸斗を睨んでいるし…。 弥は小さく息を吐き、守の様子を見る。 「……おまえ、杉野の弟だよな?」 守は陸斗から目を離さずに声をかける。 陸斗は守の鋭く、怖い表情に恐怖で満ちた顔になる。 弥も恐怖を感じ、少し守から離れる。 「……ちょっと!なに陸斗くんに睨んでんのよ!」 夏希は守の態度に怒りをあらわにする。 「別に睨んでねーよ!てゆーか、恋人同士じゃねーのに腕なんて組むな!!」 「あんたに関係ないでしょ!」 夏希はパッと陸斗から離れて守に顔を近付け、睨みあう。 陸斗は夏希が離れ、安堵のため息を漏らした。
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