・嘘の強がり

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「寿くんって知ってる?すごくかっこいい人なんだよ!なんで別れたかは知らないけど……絶対お似合いだよね?」 少し興奮気味の夏希に陸斗は小さく笑う。 そして少し俯くと顔をあげ、弥の方を見る。 「……ん、そ…だね。よかったね!弥姉。」 陸斗はニコッと笑い、その笑顔を弥にむける。 ―――――ズキッ ―――胸が痛い。 陸斗の言った言葉と笑顔が胸をしめつける。 ずっと我慢していた。 陸斗を傷つけたあの日から…ずっと――。 自分の気持ちを抑えて、陸斗は弟なんだってずっと……。 ――――ズキッ 「はは……あはは。」 弥は視線を泳がせながら笑う。 「…んっ。あり…がとう……。」 精一杯の言葉。 ――――ズキッ 『………弥、あんたもしかしてヤキモチやいてんの?弟とられて』 朝、夏希に言われた言葉。 平然を装って、思っていたこととは逆のことを言ってしまった。 ………図星だった。 陸斗にバレたくなかったんだ。 自分がまだ好きだってことを。 弟だって…頭の中ではわかっているのに、あれから陸斗と自然に話せるかようになって……。 日がたつにつれて、ますます好きになっていってしまったんだ……。 ―――――ズキッ ―――…ヤバい。 涙でそ…。 弥は後ろをむき、零れそうになる涙を必死にこらえる。 「まっ、お幸せにね!じゃあ、行こっか。……じゃーね彼女いない歴17年の守くん!」 「な………!」 夏希は陸斗と尚宏の腕を掴む。 そして守に舌をだし、馬鹿にしたように言った。 そんな夏希に守は顔を赤くさせ、怒りをあらわにする。 弥は後ろをむいたまま何も言わず、チラッと夏希達が自分の横を横ぎる時に陸斗を見た。 「――――…っ。」 ――やばっ、目合っちゃった。 弥は少し動揺を見せる。 そんな弥に陸斗は唇を噛みしめ、すぐに視線をそらした。 ―――――ズキッ 陸斗の行動に弥の胸がまた痛む。 ――…食堂に入った三人の姿がだんだん遠くなる。
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