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「たく…あいつマジでムカつく。……んで?おまえ、寿と付き合うのか?」
守は頬杖をつきながら弥を見る。
「………え?」
「………さっきの話の流れから見ると、より戻すような感じだよなぁ。」
「…………。」
弥は悲しそうに俯く。
そして、静かに口を開いた。
「―――寿は…初めての人だったんだ……。」
「………?」
守は意味がわからず首を傾げる。
「………その…えっちとか……。」
弥の頬がほんのり赤くなる。
守は黙って聞く。
「あたし、好きな人がいてさ…その人を忘れるために寿と付き合ったんだ。」
そう、陸斗を忘れるため。
叶わない恋。
「寿、すごい優しくて……この人なら忘れさせてくれるかなって思った。……そんなことを思い始めた頃のことだった。」
弥は顔をあげ、天井を見る。
守はそんな弥の様子をじっと見る。
「……他に好きな人ができた。……って言われちゃって……。たった2ヵ月間付き合っただけだったけど、少しショックだったかも。」
「………。」
弥は小さくため息をつく。
守は俯き、何も言えずにいた。
「………あたしね、今でもその人のこと好きなんだ。その人は多分あたしのこと嫌いだけど……。」
「………嫌いって…はっきり言われたのかよ?」
疑問をいだき、ずっと黙っていた守が口を開く。
「その人優しいから、はっきり言われたわけじゃないけど…。ふられたのは確かよ。行動とか表情とか………。」
『よかったね!弥姉。』
「言葉とかで………。」
ふと、さっき陸斗に言われた言葉が頭をよぎる。
聞きたくなかった言葉。
どこかで期待していた。
ショックを受けるんじゃないか、とか止めるんじゃないか、とか………。
そんなことあるわけないって、ちゃんと頭の中ではわかっていたんだ。
ちゃんと嫌われてるって分かっていた。
普通に接してくれているのだって、私に気をつかっているだけだって。
分かっていたよ………。
分かっていたけど……。
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