16人が本棚に入れています
本棚に追加
/89ページ
ポーラーベアなんて初めての“お客さま”であり、俺は今朝までバウと踊っていたのだから。
大地を揺るがす咆哮と共に繰り出された丸太のような腕を躱し、剣を何度も何度も白い毛皮に叩きつける。
盾で受け止めるにも、膂力が違い過ぎる。
倒されないようにするだけで精一杯だ。
身に纏うフィールドジャケットも、所々無惨に切り裂かれている……やれやれ、黒はなかなか無いんだがなぁ。
唯一の救いは、盾はまだもちそうであると言った所か。
「ヘッ、中身がもたないけどな……」
『え、何?』
「何でもねぇ……よっと!」
爪を躱して振り下ろした剣が奴の肩口に直撃した。
グォガァァァァァ!!
決まったと思われる一撃。
先程よりは派手に血が吹き出ているものの、あまり効いていないようだ。
それどころか、怒りを増長させただけらしい。
『えっ……』
ウァテスが驚く声が胸元から聞こえる。
そりゃそうだ、俺も驚いているのだから。
「……これまた可愛げの無い」
また額から汗が流れた。
最初のコメントを投稿しよう!