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午前3時。
某魚市場に田宮の姿があった。
『翔ちゃん、相変わらず仕事が早いねぇ。』
田宮に声を掛けてきたのは同じトラッカーの江藤だった。
『江藤さんは何処から積んできたの?越前かい?』
田宮は江藤に尋ねた。
『おう。この辺りでカニと言えば越前しかないやろぉ。』
江藤はニコやかに答えるとセッセと降ろし始めた。
『江藤さん、手伝いますよ。』
田宮が言うと、
『翔ちゃん、悪いねぇ。最近チョット腰の具合がよくなくて…』
江藤は気がね気味に田宮に言った。
一時間後、江藤の荷降ろしを一緒に終わらせた田宮は次の荷物を積むまでの間、時間があったので食事と仮眠をとることにした。
『江藤さん、次の荷までイッパイやらないかい?』
田宮は江藤を誘った。
『ヨシ、行くか。翔ちゃんのオゴリだぜ。』
そう言うと2人で行きつけの店に向かった。
『あら、翔ちゃん・江藤さんいらっしゃい。』
市場内にある食堂【新鮮食堂】は、早い・安い・上手いは当たり前、一人前がビックリするぐらいのボリュームなので市場関係者や運転手には無くてはならない場所であった。
『オフクロ、刺身とビールを二人前、頼むぜ。』
田宮が言うやいなや、テーブルに欲しかった物がズラリと並んだ。
『翔ちゃんが来ると思ってたから用意してたのよ。』オフクロは自分の子供と接するかのように優しい顔で田宮に答えた。
田宮と江藤は航海(仕事)の疲れをとるかのように新鮮な刺身に舌鼓を打った。
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