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店を出ると田宮は男に言った。
『アンタの目的は何か知らないが、運転手仲間として和を乱すような奴はオレは許さない。目的は何だ?』
すると男はニヤニヤしながら
『目的かぁ~。何だろうなぁ~。アンタと勝負して勝てれば良いって位じゃないかなぁ。』
と、あくまでも田宮を挑発し続けた。
『わかった。そんなに俺と勝負したいなら受けてやる。お前が勝てば俺はワッパを握るのを辞めよう。ただし、アンタが負けたら店に居た全員に土下座で謝って二度とワッパを握るんじゃねぇ。』
田宮は静かに男に言うと市場の事務室に向かった。
男と同じ荷で同じ目的地の仕事を貰うためだ。
30分後、田宮は2枚の伝票を持って男に近寄った。
『同じ目的地、同じ量、同じ積み荷の伝票だ。積み込み完了と同時に出発だ。ルート・速度は自由、早く着いたものが勝ちだ。文句はないな?』
田宮はそう言うと男に伝票を手渡した。
相変わらず、男はヘラヘラしながら伝票を受けとると
『アンタの敗けは決定的だけどな。せいぜい事故死しないように気を付けな。』
と言い残し、積み込みするために自分の車の方へ去っていった。
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