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人間は道具を使える唯一の動物
それが時として
災いを起こす
カナリア達の鳥籠は
真っ赤な炎に飲み込まれ、跡形もなく消え去った
皮肉な事に、私だけが
焼け残り、今もこの場所で根を張り生きている
「いい天気だねぇ…」
時代は変わり
今は明治と言うらしい
人間もお洒落になった
ものだ
私としては、着物が1番好きなんだけどねぇ
あんなにペラペラな布を引きずり、頭にはおかしな物を乗せながら歩くなんて、ほんと人間はおかしな生き物だよ
「ん?」
この娘はさっきから
何をやっているんだろう
木の上から飛び降り
じっと娘を見つめる
「あ、あの…」
私の事だよねぇ…
見えないはずなのに
この娘も私が見えるのか?
「私の事かい?」
「は、はい」
「お前は私が見えるのかい?」
「見えます…」
参ったねぇ…
「ところで、さっきから何をやってるんだい?」
「あっ…あの…」
「ああ」
「桜の花びらを、お風呂に浮かしたら綺麗だと」
「あんたはお嬢様かい?」
「まさか…お嬢様はこんな事はしません」
「そうかい」
「私はメイドです」
「メイド…ああ、女中の事かい?」
「はい」
エプロンの上には
桜の花びら
「下に落ちた花びらは
泥がついてるよ…ついでに毛虫もね」
「えっ…キャー!!」
「クスッ…そのままで」
「えっ?」
面白い娘だ
「これはほんの挨拶がわりだよ」
手を翳して花びらを舞い散らせる
「す…ごい」
白いエプロンの上には
たくさんの桜の花びら
「ただし、私の事は二人だけの秘密だよ?」
「はい…ありがとう」
「あっ、あんたの名前は?」
「香代子です」
「香代子か…いい名前だ…また欲しくなったら
いつでもおいで」
「ありがとう…綺麗な
お兄さん」
「気をつけて帰るんだよ」
「は~い」
香代子はエプロンに
たくさんの花びらを乗せて、帰って行った
「しばらくは退屈しなくて済みそうだねぇ…」
エプロンから零れ落ち、
風に乗って踊る花びらを見つめながら
遠ざかる香代子をいつまでも見送っていた
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