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「目指すは清洲城じゃ!全軍、出陣!」
頭上に限り無く広がる紺碧の大空の下、岐阜城より斎藤家の軍勢九千は進発した。それは龍興更生から一週間が経ったある日の事であった。
今まで暗君、斎藤龍興に仕えていた斎藤兵たちも、龍興が更生したことにより、どこか誇らしげな表情を浮かべていた。
今まで散々辛酸を舐めさせられていた織田信長についに一泡吹かせてやろうと、士気も旺盛であった。
「――武田信玄殿が不戦の協定、承知したとの仰せでございます。」
「――北畠殿、我らが清洲を攻めた場合、援軍を出すとの事でございます。」
「――六角殿、我らの尾張侵攻と同時に浅井に攻撃を仕掛けるとの仰せでございます。」
次々に龍興の外交の成果が、忍びの者によって報告されていた。数日前より大金を持たせた使者を送っていたのだ。
龍興は満足そうに笑みを浮かべる。
「――殿、徳川家への対策がまだ済んでおりませぬが、いかがいたしますか?」
安藤守就が龍興の馬に自らの馬を寄せ、心配そうに尋ねるが、龍興は大丈夫だと言うだけで、何も教えてくれない。
流石の守就も気になったのか、これが四度目の同じ質問である。
「何度も何度も案ずるでない。徳川は未だ三河を手中に納めたばかりよ。
駿河、遠江を領する今川と戦っておるから手は出せんじゃろう。それにこれから一年間の武田家と今川家の不戦も仲介しておる。」
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