第一章

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「――小牧山城の守将は池田恒興、兵はおよそ千程、徹底的に守りを固め、信長の後詰めを待つつもりでございましょう。」 「ふむ……。ここで力攻めも良いが、あまりは兵は失いたくないし、かといってあまり多くの時間を懸ける訳にもいくまい。 誰ぞ、何か案は無いか?」 小牧山城を包囲し、布陣した斎藤勢は早速城攻めのための軍議を開いた。城門を固く閉ざし、美濃、尾張を繋ぐ要衝なだけあって守りも堅固である。 ゆえにこうやって防御に入られると、そう簡単に落城させるのは難しい。かといって無理に攻めれば、かなりの犠牲を覚悟しなければならない。 軍議も膠着したかと思われたその時、本陣の末席から細々と上げられた手が、龍興の視界に入る。 見ると、竹中半兵衛である。 「某に考えがございます。」 「半兵衛か、申してみよ。」 「――では殿が率いる本隊は、ここを通過し、清洲へとお向かい下され。 某が北方衆を率いて兵を伏せ、本隊に追撃を仕掛けようとする小牧山城兵を攻撃します。」 「――ふむ…。それはなかなかの良策、早速実行致そう。 全軍、清洲へ進軍を開始じゃ。じゃが半兵衛だけでは心許無いゆえ、弘就も兵千を率いて伏せよ。」 龍興が威勢よく指示を飛ばし、甲冑姿の男達は慌てて自分の部隊の下に戻る。
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